ヒトは、出会いや経験の中から、自分の考えを成し、人生を選び進んでゆくのだと思います。人生の中で、影響を受けた本を紹介していくシリーズ企画。(まだ3冊目)
これがすべて、というわけではないですが、紹介していきたいと思います。
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興味はあるけど、中々手を出せない作品がいくつかあります。
最近、そのひとつを遂に手にとりました。
手塚治虫の漫画『ブッダ』です。
『ブッダ』
手塚治虫 全12巻
私は、自分のことを無神論者で無宗教者だと思っています。
『神に祈れば~』とか、『与えられた試練です~』という考え方はしっくりきません。でも、信仰心がないからと言って宗教に興味がないわけでもありません。日本という国における宗教の概念は、“おもしろい”と感じています。
正月は初詣に行き、2月の恋人の日にはチョコを配布。お盆休暇にキュウリのウマ、10月にはカボチャのらんたんを作って、12月はサンタを待つ。八百万の神が住む国の、他の宗教への寛容さは実に興味深い。
さて、本書の主人公・ブッダは古代北インド・釈迦族の王子として生まれながらも、「人はなぜ死ぬのか」などの疑問を覚え25歳で出家し、悟りの道を目指します。最初の頃は、何事にも頼りないブッダにジレったさを感じながらも読み進めます。しかしいつしか、心に葛藤を抱えながらも挑戦し、失敗しても前に進むことを止めずに活路を見出していくブッダに共感を覚えるわたしがいました。
民だけでなく、悪党や一国の王とも向き合い、その人を変えていったブッダ。
どんな大罪を犯したものでも許し、ひたすらに“これからの未来をどう生きていくのか”を根気よく問います。
『手塚治虫のブッダ』を読みながら、ふと気づくと、わたしは自分自身の生き方を振り返っていることに気づきました。振り返ることで改めたり、気付きを得たりするわけです。
それはまるで、この漫画の存在がブッダが励んだ布教活動に重なるんじゃないか、とも思えるような不思議な感覚でした。
相手に合わせて“伝わることば”で“伝わる話”をする。説法もこんな感じだったのかもしれない。それを、“漫画”というツールを使って現代の人々に説法しているのだとしたら、手塚治虫の才能とはすごいものだ、とも思ったわけです。
足元も出口も見えない暗闇のトンネルは不安になる。その中を歩み続けるか迷った時でも、足元にちゃんと道はあって、進むことでその先に出口を示す光が見えれば、また一歩を踏み出す気持ちにもなるのかもしれない。『ただ答えを与えるのではなく、自らの力で答えを弾き出せるように導くもの』と宗教を捉えるのであれば、宗教というのは悪くないのかもしれない。そう思わせてくれた作品でした。
余談ですが、
私にとって『ブッダ』の裏名著的な存在として『聖☆おにいさん』という好きな漫画があります。
世紀末を無事乗り越えたブッダとイエス・キリストがひと時のバカンスを東京・立川で過ごすという、説明しても「なんだそれは・・」という漫画なのですが。(わざわざ説明することに申し訳なさを感じます・・・)
これを読んでからブッダを読むと、また違う境地に立てるので、併せてオススメしておきます。
どちらを先に読むのがいいかは・・・ちょっと・・・分かりかねます。